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~ゆるやか映画感想ブログ~

『フル・モンティ』 映画×音楽×負け犬たち ~名作の方程式~ 

映画×音楽×負け犬たち=名作

ざっくりいえば、何かしらの失敗や困難、マイナスを抱える人たちが、音楽やダンスを通じて再生していく物語です。

 

今年ヒットした『ラ・ラ・ランド』にもこの方程式が当てはまりますね。

他にも『スクール・オブ・ロック』(2003)とか、『ザ・コミットメンツ』(1991)とかも同じタイプで、面白くて大好きです。

とにかく、この方程式に外れなし。

そして、この方程式の最高峰がフル・モンティ』(1997)です!

既に名作として名高い『フル・モンティ』ですので、あくまでネタバレありで個人的感想を書いていきます。

まずはあらすじ。

舞台はイギリス・シェフィールド。かつて製鉄業で栄えたこの町も、当時の勢いはすでになく、さびれた曇り空ばかりが印象に残る町になっていました。

工場の閉鎖で失業した主人公のガズ(ロバート・カーライルが、親友のデイブと息子のネイサンとともに、閉鎖された工場から鉄を盗み出そうとするシーンから物語は始まります。

鉄を盗み出すことに失敗したガズたちは、町の女性たちの間で男性ストリップショーが人気であることを知り、自分たちでもストリップショーをすることを決意。

そして彼らは、同じく製鉄所の閉鎖で職を失っていたロンパー、元上司のジェラルドに加えて、中年の黒人男性ホースと巨大なモノを持つガイの2人をオーディションで採用し、6人でストリップショーに向けた練習を開始します。ネイサンは子供なので音楽係を担当。

しかし、その道中には当然さまざまな困難が。

そもそも、筋肉的でイケメンのガイ以外の面々は、太かったり細かったりするごくごく普通のおじさんたちだし、踊りもロクにできない。

けれど彼らは、それぞれが私生活で抱える問題を解決するため、懸命にトレーニングを重ねます。

会場代も子供のネイサンの貯金を使って何とか捻出し、宣伝のためにショーのポスターを張っていたところ、それを見ていた女性たちに小馬鹿にされ、腹を立てたガズがショーは「フルモンティ」(=すっぽんぽん、全裸)だと宣言してしまいます。

その結果、太った体型に自信がなかったデイブは離脱を決意して警備員になってしまい、残りのメンバーも閉鎖された工場で勝手に練習していたため逮捕されます。

それでもなんとか困難を乗り越えて、ショーの当日へ。彼らが逮捕されたことがかえってショーのいい宣伝となり、会場は超満員。

妻に説得されたデイブも戻ってきて参加。ガズも直前になって怖じ気づいていましたが、息子のネイサンに励まされ、最後は全員でストリップショー。

音楽に合わせて一枚ずつ服を脱いでいって、「帽子を取らないで」という歌詞をバックに、股間を隠していた帽子を投げ捨て映画は終了します。

ここがよかった①

まずよかったのは、ガズとネイサンの親子愛。ガズはすでに離婚していて、別れた妻にはすでに新しい男がいます。この男がまあ嫌な奴なんですが、元妻から700ポンドの養育費を出さないと共同親権がなくなるといわれ、ネイサンと別れたくないガズはそれを払うためにストリップを決意するんです。

ネイサンのほうもガズを慕っていて、彼らのおバカさにやや呆れながらも、どこにでもついていって協力します。

すでに離婚した父親が、よくわからないおじさんたちとストリップの練習をする。よくよく考えたらそんな場に子供がいるのはちょっとアブないんですが、それを感じさせないのは彼らの親子愛のおかげでしょうね。

そしてなんといっても、会場代をネイサンの貯金から捻出するシーン。ガズはあまりの情けなさに貯金を使うことをためらうのですが、ネイサンは父親を信用してお金を預けます。

終盤、ストリップショーの直前におじけづくガズの背中を押すのもネイサン。

彼らの親子愛がこの映画を単純なコメディに加え、泣きの要素をうまく演出してます。

 

ここがよかった②

 やっぱり個々に描かれるキャラクターの個性は印象的。

ガズは万引きもするし、小悪党なダメおやじですが、ネイサンへの確かな愛があります。デイブはいいやつですが、結構なデブで、自分の体形にうじうじ悩み続けます。

ジェラルドは偉そうだし、自分の失業を半年以上妻に隠し続けているような人ですが、ユーモラスな一面やリーダーシップを持つナイスミドルでもあります。ロンパーは暗いけど、いい笑顔。ホースとガイもいい味を出してます。

彼らの特徴は、等身大であること。彼らはいたって普通の人々で、みなそれぞれに悩みを抱え、いい面もあれば、悪い面もあります。

そんな彼らが走り込みやダンスのトレーニングをする姿は、完璧からは程遠い。ですが、完璧でないからこそ親近感を覚え、ニヤニヤしながら応援したくなるんですよね。

特に、デイブが独り小屋に入って体にラップをまくシーン。「体にラップをまくと痩せる」といわれてそうしているのですが、巻きながらチョコレートを食べてて、痩せる気があるのかないのか。人間臭くて、好きなシーンでした。

細かい人物・心理描写が、この映画をただ明るいだけのコメディとは違った深みを出してます。

ここがよかった③

音楽と台詞回しも、この映画の魅力ですね。

劇中で流れる音楽はノリのいいものが多く、職安で並んでいたガズたちが、そこで流れてきた「ホット・スタッフ」に合わせて踊りだすシーンは見ていて楽しい。

台詞回しにもイギリスらしい皮肉っぽさが随所に散りばめられてます。「芸とゲイ」は翻訳が光っていたいいシーンです。

まとめ

ごく普通の悩めるおじさんたちが頑張るストーリーで、観た後はどこか優しい気持ちになれる映画です。もちろんそれだけでなくイギリスらしい皮肉や、音楽も魅力的です。

ただ、町ぐるみで男性ストリップにめちゃくちゃ寛容なのはイギリスだからなのでしょうか?

まだまだ触れたいシーンは多いですし、映画をみたそれぞれの人に好きなシーンや好きなキャラクターがあるのではないでしょうか。

ストリップがテーマなので、そっち系が苦手な人には強くはすすめませんが、それだけで敬遠するのはちょっと惜しい映画ですね。

とにかく、約90分あっという間に楽しめる名作です!

山田孝之フルモンティはどうだったんだろう。

映像化されたら見てみたいですね。