デリバレイティブ映画観

~ゆるやか映画感想ブログ~

「現金に体を張れ」〜トランク、ちゃんと閉めよう〜

〜トランク、ちゃんと閉めよう〜

今回の映画はこちら。

 

現金に体を張れ」(1956)です!

「2001年宇宙の旅」や「シャイニング」など、

言わずと知れた超有名映画監督スタンリー・キューブリックのハリウッド第1作のこの作品ですが、

原題は「The Killing」。

それと、邦題の「現金」は「現ナマ」と読ませるようなのですが、

まずはあらすじ。

ネタバレはありです。

競馬場でのレースが始まる様子から映画は始まります。

そこで、マービンという老人が、場内のバーで働くバーテンダーマイクと何か話した後、

キャッシャーとして働くジョーに、裏にある住所が書かれた馬券を手渡します。

次は、警官のランディーが借金をしている相手に対して、

大きなお金が入る予定があるから返却を先延ばしにしてくれるよう頼んでいる場面。

次の場面で登場するのが、主人公のジョニー

彼は5年の服役を終えた後、恋人との再会を果たしているところでした。

そこにマービンが現れ、何かの計画について話します。

そして、マイク病気の妻のためにこの計画に参加していること、

ジョーは自分を見下している美人妻シェリーの心をつなぎとめるために

お金が必要で計画に参加していることが描かれます。

その際にジョージから大金を得る計画について聞かされたシェリーは、

浮気相手のバルという男とともに、その金を横取りすることをたくらむのでした。

 

その後、馬券の裏に書かれた住所で集会が行われます。

そこで、ジョニーをリーダーとして、マービン、マイク、ジョージ、ランディーたちが、

競馬場の金を強奪する計画を立てていることが明かされます。

綿密な計画を話し合っている最中に、

ジョニーは誰かが立ち聞きしていることに気づきます。

立ち聞きしていたのがシェリーであることがわかると

夫であるジョージは妻に計画を漏らしていたことを責められ、

その場から追い出されます。

ジョニーはシェリーを捕まえて、邪魔をするなら計画は中止だ、と彼女を脅迫します。

一方、ジョージは追い出されたことに腹をたて、計画を抜けようとしていましたが、

まだ金を横取りすることをあきらめていないシェリーは、

計画の実行日をジョージから聞き出すため

計画から抜けないように彼を説得します。

ジョニーは計画のため、モーリスというプロレスラーと、

射撃場を経営するニッキーを引き入れます。

さらに、バンガローも借りて、着々と準備を進めます。

 

そうこうしているうちに、計画実行の日を迎えます。

そのころシェリーも計画実行の日がいつなのか、

ジョージからうまく聞き出していました

計画は以下のように進みました。

まずモーリスがバーでマイクとけんかして、警察を引き付ける。

ニッキーが第7レースの本命馬を狙撃して、競馬場を混乱させる。

そのスキに、ジョニーが銃を持って強盗を成功させ、

奪った金を下で待つランディーが受け取り、バンガローへ運ぶ。

バンガローからジョニーが金を皆のもとに持ってくる。

 

計画はギリギリ成功し、

みなはある部屋でジョニーを待ちます。

しかし、現れたのはシェリーの浮気相手のバルでした。

金を奪いに来たバルでしたが、彼に罵られたジョージが、自身も撃たれながらバルを撃ち殺します。

到着時間に遅れていたジョニーが部屋のあるアパートの下につくと、

中から血まみれのジョーが出てきました。

異常事態を悟ったジョニーは奪った金をトランクに詰め替えて

恋人と共に逃げるため飛行場へ向かいます。

そのころジョージはバルの部屋で待っていたシェリーを撃ち殺し

息絶えていたのでした。

 

ジョニーは飛行場について搭乗手続きをするものの、

金を詰めたトランクを機内にもちこめず、

しぶしぶ預け入れることにします。

トランクはバイクに乗せられて飛行機まで運ばれるのですが、

急に飛び出してきた犬に驚いた運転手が大きくハンドルを切ると、

トランクは転げ落ち、

中からは大量の札束が空中に舞い上がったのでした。

そうして、ジョニーが競馬場強盗の犯人であることが露呈し、

空港に張っていた警官にジョニーが逮捕されるシーンで映画は終了します。

 

 ここがよかった①

さすがキューブリック監督の映画、という感じで、一つ一つの画面が強いですね。

モノクロの映画なので、光と影の演出が巧みに場面場面に重み迫力を与えています。

印象的だった場面をあげるなら、

計画について男たちが話し合う集会のシーンと、血まみれのジョージがシェリーを殺す場面の2つですね。

集会シーンのほうは、とにかくシブい

フィルム・ノワールらしい重々しい空気と、

ハードボイルドなかっこよさ

とくに主人公のジョニーはカッコイイ。

まさにハンサム。

そして、ジョージのシーンのほうは、

あそこだけ急にホラーになる感じ。

ジョージの呆然として、何物もとらえていない絶望しきった眼。

光と陰で描かれるあのシーンは、ぞっとするシーンでありながら、

どこか同情を誘うものでした。

そして、ラスト。

トランクから宙に舞う大量の札束。

ああああぁぁ~

となることうけおいです。

あんなに無念なシーンがほかにあったでしょうか。

ちょっと思い当たらないくらい、むなしい。

そこからの、一気に訪れるラストシーン。

空港に張っていた2人の警官がジョニーを見つけ、

ジョニーの視点で2人が迫ってくる場面で終わるのですが、

ゲームでいうところのゲームオーバー画面のようで、

まさに「終わり」といった印象を強く残します。

一切余計なもののない終幕のストイックさ、潔さ

背中がびしっとなります。

ここがよかった②

物語に挟まれる様々な示唆、暗示が面白かったです。

まず、一番印象的だったのが「格子」のイメージですね。

競馬場のキャッシャーの窓口やベッドのヘッドボードが格子になっていたり、

部屋に差し込む影が格子状になっているなど、

さまざまに映像に格子が存在します。

その格子越しに人物が映ることで、格子から「刑務所」というイメージが連想されて、

事件の失敗がそれとなく暗示されます。

また、計画の出資者であって、本来は計画当日に参加する予定ではなかったマービンが

勝手に競馬場へ来てしまうという微妙なずれも失敗の暗示のような感じがしました。

 

まとめ

一番好きだったのは、ラストの札束が舞うシーンでした。

強盗計画はあんなに綿密だったのに、

カギが壊れたトランクは取り替えないの!?

ほんとに油断大敵です。

ジョージも気弱で口軽すぎかなあ。

ほかにも、シェリーの賢い悪女っぷりや、

プロレスラーとしてはたらくモーリスのセリフなど、

おもしろい場面は多かったですね。

モーリスのセリフはどれも知的で、

とてもスキンヘッドの巨漢から繰り出される感じではありません。

そこからの、まさにプロレス技で暴れまわるシーンはギャップがすごくて笑いました。

そして、キューブリックの初期作品ながら、

カメラワーク客観的なリアリズムなど、

らしい特徴が感じられたのがとても楽しい映画でした。

まだみていないキューブリック作品もどんどん見ていこうと思います。

それでは。