デリバレイティブ映画観

~ゆるやか映画感想ブログ~

『拳銃の報酬』〜計画より人選〜

〜計画より人選〜

 

6月もマイペースに書いていきましょう。

現金に体を張れに続いて、

またもフィルムノワールから選んだ今回の映画。

 

拳銃の報酬(1959)(原題:Odds Against Tomorrow)です!

監督はロバート・ワイズ、主演はハリー・べラフォンテとロバート・ライアン

いくつもの側面を持つ映画でしたが、

ネタバレありで

 

まずはあらすじ。

 

ジュノー・ホテルに入っていく主人公のアール・スレイダーロバート・ライアン)。

彼が訪ねたのは、デイブ・バークエド・べグリー)という元警官の老人だった。

 

デイブは警察に30年勤めたのにも関わらず、

法廷での証言を拒んだことで法廷侮辱罪に問われ、1年の懲役刑に服していた。

一方のアールも前科2犯であり、2人はまともな職に就くことができないでいた。

そこで、デイブはアールに銀行強盗を持ちかける。

 

アールが参加を決めて部屋から去った後、

1人の黒人が彼の部屋を訪れる。

彼はジョニー・イングラム(ハリー・べラフォンテ)という黒人歌手であり、

競馬狂いのためにバコというマフィアから多額の借金を抱えていた。

デイブはジョニーも銀行強盗に誘い入れるが、

彼が競馬で一発当てることを考えていたために断られる。

 

しかし、デイブはジョニーを何としても計画に入れようとバコに手を回すのだった。

 

次のシーンで、デイブはアールを彼のマンションに迎えに行く。

アールは、職のない自分を養ってくれているロリーという女に、

デイブの儲け話に参加すると語る。

心配してくれるロニーに対しヒモであることの引け目を感じながら、

アールはデイブとメルトンという地区の襲撃予定の銀行の下見を行う。

 

そのころ、ジョニーが勤めるジャズ・クラブにバコが部下とともに訪ねてきた。

競馬で負け続けていたジョニーに対し、

デイブから根回しされていたバコはすぐに借金を返すよう迫る。

返さなければ別れた妻や娘を狙うと脅されたジョニーは逆上してバコに銃を向けるも、

結局は借金を返さざるを得なくなる。

 

そして、その翌日が娘との面会日だったため

ジョニーは娘のイーディと公園で過ごしていたが、

そこにもバコの部下たちが来ていることを知ったジョニーは、

妻と娘のために強盗計画に参加することにする。

 

一方、計画の仲間が黒人であることを知ったアールは、

それならば計画を降りるとデイブに告げ、自宅に戻る。

アールはロリーからクリーニングの服を取りに行くことと

隣人の主婦の子供の子守りをすることを置手紙で頼まれるが、

プライドが高いアールは子守りを断る。

そして、クリーニングを取りに行った帰りに寄ったバーでも若者とけんかし、

ロリーとも喧嘩してしまう。

そしてなげやりにデイブに計画に参加することを電話で告げ、

そしてついには腹立ちまぎれに子守りを頼んできた主婦と浮気するのだった。

 

こうして3人はデイブの部屋で計画を練る。

しかし、そこでアールは差別的発言をジョニーに浴びせかけ、

2人の間に対立が生じ始める。

そして、帰宅したアールはロリーと仲直りをする。

 

いざ実行の日となり、

ジョニーはバスで、2人はエンジンを改造した車でメルトンへ向かう。

しかし、そこで車を改造していることをガソリンスタンドの店員に知られたり、

交通事故を目撃したジョニーが警察に呼び止められ顔を見られてしまったりと

予期せぬトラブルが起こる。

 

ジョニーが警察に見られたことをアールが責めたことで2人の対立は決定的となり、

デイブは全員を犯行時間まで別行動にすることに決める。

 

そして、犯行予定の夜6時となり、3人は計画を実行する。

ジョニーが普段から銀行に食事を配達している黒人店主のふりをし、

デイブが本当の黒人店主を足止めする。

 

計画はうまくいき、デイブは現金を袋に詰めて車へ戻ろうとする。

しかし、ドアから出るところを警察に発見され、

デイブは警官に撃たれる。

 

デイブが車のカギをもっていたため2人は車で逃げられなくなった。

しかしアールはデイブを助けて車のカギを取り戻すのではなく、

彼を見殺しにして逃亡を図る。

 

そんなアールに怒ったジョニーは彼に銃口を向ける。

アールが逃げた先はガス・タンク地区であったが、

2人がガス・タンクの上で撃ち合ってしまった結果、

大爆発が起こる。

2人の死体は見分けがつかないほど真っ黒に焦げており、

 

『行き止まり』という看板が映し出されて映画は終了する。

 

 ここがよかった①

トーリーはつまらないといってしまえるように思えますが、

最後のオチは皮肉とメッセージが込められた秀逸なものでした。

この映画の本質は銀行強盗サスペンスよりも、

サスペンスを通じてアメリカ社会を描くことにありますね。

 

銀行強盗するのがこの映画の本筋のストーリーであるはずなんですが、

前半は計画の準備を詳細に描くシーンはあまりありません。

中心として描かれるのは、アールという白人とジョニーという黒人です。

 

まず前科によって経済的にロリーという女性から自立できずにいるアールですが、

白人男性至上主義的な考えに囚われている彼はそんな自分を恥じて、

社会に強い劣等感を覚えます。

 

その劣等感が人種差別という形をとってアールという人物の言動に影響を及ぼすのですが、

一方のジョニーも白人に強い敵意を抱えているのです。

それは彼の別れた妻とかわす会話によく表れています。

彼の別れた妻は、自宅でPTAの会合を開くなどして、

白人社会に参加しようという努力をしています。

ですが、そんな妻に対してジョニーは白人の社会に参加するのはやめろと警告する。

黒人歌手としてジャズ・クラブで働く彼は、黒人としてのアイデンティティを強く誇示しているからでしょう。

 

そんな2人は強盗のために協力せざるを得ない場面でも、

差別と対立をやめることはありませんでした。

 

その結果として、犯行が失敗したばかりでなく、

2人はガスタンクでの大爆発を起こして死にます。

黒焦げになった2人の死体が見分けがつかなくなったこと、

そして行き止まりという看板が移されるのは、

人種差別の行きつく先を非常に皮肉めいた形で描いた印象的なエンディングです。

 

こうした2人の姿勢は、50~60年代のアメリカの人種差別の現実を反映したものでしょうし、

この当時のハリウッド映画としてはなかなかセンセーショナルだったのではないしょうか。

ここがよかった②

音楽が非常に印象的な映画でもありました。

OPからなかなかオシャレな音楽でしたが、

映画を通じてジャズが効果的にBGMとして使われています。

黒人音楽であるジャズを中心に据えたこともこの映画のメッセージを伝える手段のひとつだったと思われます。

 

そして、ジョニーを演じたハリー・べラフォンテの歌声も魅力的でした。

ジャズ・クラブでの歌唱、そしてビブラフォンの音色はこの映画のハイライトの一つといってもいいほどのインパクトでした。

黒人女性シンガーが歌う『All men are evil』も状況にぴったりはまっていましたね。

ジャズという観点からも楽しめる映画です。

 

まとめ

先ほども書きましたが、

トーリー、というか強盗計画はお粗末です。

 

デイブがなぜ、まず仲良くなれるはずがないことがわかりそうな2人を計画の相棒に選んでしまったのか。

銃を手に入れる経緯や車を改造するところも大胆に省略。

 

さらに、ジョニーが黒人店主のふりをしてドアから押し入るという計画も、

入ってからどうするとかはとくに計画してません。行き当たりばったり。

 

さらに、本物の黒人店主を足止めする方法も

彼が配達する食事をこぼさせるという中途半端なもので、

結果的に店主はすぐ銀行への配達を再開してしまい、

犯行現場を見られるという粗末さです。

 

まして、ドアを出たところを警察に見られるという杜撰さ。

映画を見ている最中はそのいい加減さが気になるのですが、

全てはあのオチのためです。

 

エンディングという1点のすべてが集約する映画ですので、

アールのクズっぷりや盛り上がらないいい加減な銀行強盗は我慢して、

重い雰囲気とカメラワークを楽しみながらなんとか最後まで見ましょう。